パソコンでよく言われるのが「GPU」。「グラフィックボードとかビデオカードのことだよね」という認識の人もかなりいるでしょう。厳密には若干違います。「自分GPUに詳しいよ」という人も少なくないかもしれませんが、「浮動小数点数演算性能」「アンチエイリアス」「オンボードグラフィックス」「フィルレート」を説明できる人はどのくらいいるでしょうか?
本ページではそのような自作PC界隈やBTO界隈で必要な知識を紹介・解説します。
ページの最初は超初心者向け、下に行けば行くほど難易度が高くなっていきます。
レベル1:GPUの基本知識
著名なGPUメーカー
GPUにおける著名なメーカーは主に3つあります。
NVIDIA
NVIDIAはアメリカのカリフォルニア州に位置する世界最大級の半導体メーカーです。特にGPUに強い。
今現在の「NVIDIA」の時価総額はApple、Microsoftに次ぐなんと275兆円。あのAmazonやアルファベット(Googleの親会社)とほぼ同じくらいの時価総額の米国の超大企業です。日本の「トヨタ」が55兆円で、日本企業の時価総額トップ10企業の合計が202兆円であることから、規模感は伝わるかと思います。
GPU全体のシェアは17%でIntelに次ぐ業界2位ですが、ディスクリートGPUと呼ばれるグラフィックに特化したGPUのシェア率は82%で圧倒的に1位です。
AMD
AMDもアメリカ企業です。CPUでは「Ryzen」ブランドで後述するIntelとシェアを分け合っています。
そのAMDのGPU全体のシェアは12%で業界3位です。グラフィック特化GPUではシェア率は9%。シェア率は高くはなく、NVIDIAに圧倒されている感が否めません。
Intel
Intelもアメリカ企業で、著名なGPUメーカーはすべてアメリカ企業となります。Intelは主にCPUで知名度が高いですが、GPU全体の市場では決して弱くありません。
2020年にIntelは「グラフィックボード」の市場に復帰しました。
IntelのGPU全体のシェアは71%と業界トップです。しかし、グラフィック特化GPUではシェア率は9%でAMDと並びます。
自作PCやBTOでは「ディスクリートGPU」が命と同じくらい大切ですので、パーツとしてのGPUならNVIDIA一択です。
AMDも最近復帰したIntelも性能面では弱すぎるわけではありませんが、知名度では完敗です。
ブランド
ここまでに紹介した3つの企業は、それぞれ「GPUブランド」を持っています。自作PCやBTOでGPUに着目するとき「ブランド名」の知識は絶対に必要です。
NVIDIA GeForceブランド
NVIDIA社は「GeForce」というブランドのGPUを販売しています。
このブランドのGPUの使用率は圧倒的で、例えば「Steam」と呼ばれるゲーム配信プラットフォームでのGPU使用率は、2024年1月時点では以下のようになっており、上位10位までGeForceブランドが独占、上位20位までの製品のうち17の製品がGeForceブランドであるなど、圧倒的なシェア率を誇ります。
AMD Radeon
こちらはAMDのGPUブランドのAMD Radeonです。
正しい読み方は「レイディオン」「ラディオン」ですが、ローマ字読みで「ラデオン」と読んでいる人がかなり多いです。
知名度ではNVIDIA GeForceの次ではありますが、使っている人は非常に少ない印象です。実際のところ、Steamを使用する際に使われているGPUのランキングでも上位20位には1つしかランクインしていません。
しかしながらゆるやかにシェア率を伸ばしており、今後期待されるブランドではあります。
Intel Arc
このIntelのブランドはほとんどの人にとって聞きなじみはないでしょう。2020年に発表してからまだ4年、発売開始は2022年でまだ2年しか経っていないからです。
NVIDIAのGeForceやAMDのRadeonは低性能から超高性能のGPUまでおおむね揃っているのに対して、Intel Arcは低性能からやや高性能と種類を絞っている印象です。
まだ初代のGPUしか発売されていないためなんとも言えないところではありますが、初心者の方にとっては様子見で問題ないでしょう。
シリーズ
シリーズの和訳は「一連の」という意味になります。通常、GPU業界では同じブランド名の製品群を1年から2年間隔で発表します。
GPUメーカーでは、発売年や製品名が近いものをひとくくりにして「シリーズ」としています。
構造的には「ブランド>シリーズ」となります。
NVIDIA GeForceブランド
ハイクラス(高性能)からウルトラハイエンド(超絶高性能)GPUでは「GeForce 40シリーズ」、ミドルレンジで(中性能)は「GeForce 16シリーズ」が現在NVIDIAが力を入れて発売している製品です。
数字が多くてわかりにくいですが、それぞれのシリーズの製品名の特徴として、
「GeForce 40シリーズ」では製品名は「GeForce RTX 40…」のようになっていて、
「GeForce 16シリーズ」では製品名は「GeForce GTX 16…」のようになっています。
具体的な製品名としては、「GeForce RTX 4090」「GeForce GTX 1650」などがあり、数字の部分は4桁となっています。
「RTX」が高性能~超絶高性能、「GTX」が中性能ということさえ覚えていただけたらOKです!
AMD Radeonブランド
現在主流であるのが「Radeon 7000シリーズ」です。NVIDIA GeForceとは異なり、Radeonはローエンド(低性能)からハイエンド(超高性能)までをこのシリーズで販売しています。
このシリーズは製品名が「Radeon RX 7…」のようになっていて、人によってはRXシリーズという人もいます。
具体的な製品名としては、「Radeon RX 7600」「Radeon RX 7900 XT」などがあり、数字の部分は4桁となっています。
Intel Arcブランド
まだ初代しか発売されていないことから方向性は不明ですが、現在は「Arc Aシリーズ」が主流になっています。
このシリーズの中でも3つに分けられていて、「Arc 7」「Arc 5」「Arc 3」となっています。このネーミングのやり方はCPUと似ています。
「Arc 7」がハイクラス(高性能)からハイエンド(超高性能)で、製品名は「Arc A7…」
「Arc 5」がミドルレンジ(中性能)からハイクラス(高性能)で、製品名は「Arc A5…」
「Arc 3」がローエンド(低性能)からミドルレンジ(中性能)で、製品名は「Arc A3…」
数字の大きさがかなり直感的に性能に結びつくため、他ブランドよりもわかりやすいですね。
具体的な製品名として、「Arc A750」「Arc A310」などがあり、数字の部分は現状では3桁となります。
VRAM(ビデオメモリ容量)
パソコンやスマホには「メモリ」(メモリー)という、一時的にデータを書き込む部品(パーツ)が搭載されています。
GPUもパソコンのパーツの一つではありますが、そのGPUの中にも特別なメモリが搭載されています。それがVRAMです。
このVRAMはGPUのためだけに使えるメモリで、このメモリの大きさがかなりGPUのスペックに影響を与えることになります。
現行のウルトラハイエンドのGPUでは24GB程度のVRAMが主流で、業務用では60GB以上のVRAMが搭載されています。ハイエンドにあたるのはおよそ12GBから16GB程度でしょう。
生成AIなどでは12GBから16GB程度のVRAMがあればイラスト生成においてはおおむね快適であると言われており、実際にVRAM12GBでイラスト生成AIを実行したところ遅さは気になりませんでしたので、もし生成AIをやりたいのでしたらハイエンド以上のGPUが推奨となります。
ミドルレンジではおよそ6GBから8GBのVRAMが多く、軽いFHDゲームなら快適に使うことができます。ローエンドでは4GB以下が主流です。
価格の雰囲気だと、10万円代で購入できる比較的安価なゲーミングPCはミドルレンジが多く、20万円を超えるゲーミングPCで初めてハイエンドのGPUが搭載されます。ウルトラハイエンドとなるとCPUやその他パーツにもよりますが40万円を超えます。
消費電力(TGP)
消費電力とは、読んで字のごとくGPUでグラフィック処理をするときに消費する最大の電力のことです。ただし、常にその消費電力になるかというわけではなく、稼働率100%のときの消費電力と考えてください。
一般的に一番よくつかわれる消費電力の指標で、英語では「Total Graphic Power」(TGP)となります。
ローエンドでは数十ワットであるのに対し、ウルトラハイエンドクラスになると400ワット程度の消費電力となり、500ワットの電子レンジに匹敵する消費電力となります。
TBP
TGPはGPUがグラフィック処理をするときの消費電力量の最大でしたが、TBPはそれに「放熱ファン」とか「光らせるためのLED」などの消費電力量を足した値です。
TBPは「Total Board Power」の略で、和訳するとしたら「グラフィックボード総消費電力」でしょう。
TDP
以前は熱設計電力であるTDP(Thermal Design Power)がスペック表に掲載されていましたが、これはGPUの設計上の「発熱量」です。「消費電力」とは異なります。
これが意味するところとしては、「●●ワット相当の発熱をするから、それに対処できるような冷却装置をつけよう」という話になります。
消費者側としては設計的に生まれそうな発熱量よりも消費電力の方が気になるため、先ほどの「TGP」に置き換わりました。
アイドル時消費電力
特段処理をしていないときの消費電力のことで、英語では「Idle Power」といいます。